水引を扱う上での基本である『しごく』という動作。これができないと水引細工は始まらないと言っても過言ではないほど大切な、水引を調える技術なのですが、これについて理解できるよう掘り下げて解説されているところがあまりに少なく、サラっとしか触れられていないことに気付いたので、初めて水引に触れる方でも理解しやすいよう配慮しながら解説していきます。
しごくの意味とは?漢字では『扱く』と書きます。
Goo国語辞書さんによると・・
細長いものを握ったり指で挟んだりして、強く押さえつけるようにしながら、その手や指をこするように動かす。
扱く(しごく)の意味 – goo国語辞書
確かに『細長い水引を指で強く押さえながらスライドさせる』という動作を表しています。
なぜしごく(扱く)のか
水引の芯部分の素材の特性
これは水引の芯の部分の素材である”紙”の特性に関係しています。
様々に装飾されたものが多くなり一見わかりにくいですが、水引の芯の部分は和紙の”こより”でできており、紙なのです。
わかりやすい例として、折り紙や画用紙を思い浮かべて欲しいのですが、細長く切って手でピーっとしごくと、クルリンとカールしますね。
または、机の角などに当ててやったりしても丸まります。子どもの頃に工作などでやった方も多いのではないでしょうか。これと同じ原理で、綺麗にカーブさせたい時には『しごく』ことが必要なのです。
また、机でしごいている紙と同じように、指で押さえている”力を加える部分”は大なり小なり水引がグッと曲げられている必要があります。真っ直ぐのままいくら強く力を加えても、あまり意味がありませんので、曲げながらしごくのがポイントです。
しごかないとどうなる?
折り紙や画用紙くらいであれば、手で押さえていれば扱かなくとも綺麗にカールさせることができますが、これが厚紙や段ボールくらいになってくるとどうでしょう?扱かずに無理に曲げようとすると、キレイなカーブにはならず、どこかでガクッと折れてしまいます。
とても極端な例ではありますが、水引のイメージとしてはこの厚紙や段ボールの部類に入ると言えるので、曲げて使う場合はよく扱く必要があります。
『しごく』の今と昔、そしてこれから。
ハンドメイドのアクセサリーなどで水引が使われるようになってきた頃からでしょうか、今は目打ちでしごくのが一般的になりました。しかし、ほんの一昔前はほとんど手でしごかれていました。今でも職人さんは手でしごく方がまだ多いかもしれません。なぜ昔は手でしごかれていたかと言うと、水引が柔らかかったからです。
一般的に機械で作られる紙よりも、手漉きの和紙の方が断然柔らかいのと同じように、水引の製造方法も、今はほとんど機械化されていますが昔は職人さんの手で作られていたので、とてもしなやかでいて柔らかく手でしごくだけで十分に対応できたのです。
今ではその人の手で作られる手漕ぎ水引もとても貴重品です。
💡ちなみに私の場合、、
私はこの職人さんの手で作られた貴重な手漕ぎ水引を贅沢に使わせていただきながら、手でしごく事しか教わらなかったので、それが当たり前だと思っており、後に手芸本の中で、目打ちという道具でしごいているのを初めて目にし、大変なカルチャーショックだったものです。
実際に機械で生産された水引を使ってみるとやはりとても硬く、たくさん作る時や一度に扱く本数が増えるほど、今までと同じしごき方では確かに手が痛くなってしまったり、困ることがありました。それから目打ちも使うようになり、今は用途により使い分けています。
水引はさらに年々硬くなってきている傾向にあると感じているので、買う場所や種類により一概に言えませんが、硬い水引用に、目打ちは一つ持っておくと良いと思います。手芸用品店や、百均でも手に入れることができます。
手と目打ちどちらでしごくかは、とにかくキレイなラインが出るようにしごけるかどうかが重要なので、自分がやりやすい方を選んでいただければ大丈夫です。
きついラインを出したい時ほど良くしごく
水引の様々な用途によるラインの違い
水引の用途は様々です。例えば、ゆるいラインの方からご紹介していくと、フラワーアレンジに添えられる水引やしめ縄、通常の水引結びなどがあります。
水引結びは、一般的に結ぶ時の本数が多い程ゆるめのラインになり、1本で小さく結んでいく玉結びなどは一番きつめのラインになります。
このように、作るものによって出したいラインに結構な差があるので、しごき方もこれに合わせて変えていかねばなりません。
フラワーアレンジやしめ縄くらいのゆるさであれば、扱かなくても綺麗に曲がるので、下手に柔らかくしてしまうとピーンとした美しさがなくなってしまうので逆効果となることもあります。
真っ直ぐに使う時など、水引をしごかない場合の例
真っ直ぐに使いたい場合は、当たり前ですが扱きません。水引の直線的な美しさも魅力の一つですし、扱かないのはもちろん、それこそ絶対に傷まないように大切に扱ってください。
また以下のように、部分的にまっすぐなまま残しておいた方がいい場合、というのもあります。
水引を結ぶ時も水引の先端部分は扱かない方が、通しやすく扱いやすいです。
シンプルな祝儀袋のあわじ結びなど、デザインにメリハリをつける時。結ばれていない部分は真っ直ぐにピーンと残してあります。
ちなみに、祝儀袋にシンプルにあわじ結びをかけるというのは、見かけによらずごまかしがきかないので難しいです。このようなしごく部分としごかない部分のメリハリをつけられるのが、職人と呼べるようなプロの仕事です。
一番最適なしごき具合をつかもう!
自分で掴む
しごき方は、とても繊細な調節でもあるので、自分でつかむしかない部分も大きく『この水引は1回しごいてあの水引は硬いから2回・・』などと数字で表せるものではありません。
『柔らかくなるよう2、3回しごいてください』というような解説の通りにやったからOKというわけでは決してなく、綺麗なラインが出るような状態にしごけているのかどうか、という事が全てなので、そこは作る人がちゃんと自分の目で見て感じとり調節してあげなければなりません。
過不足なくしごく
あまり私が「しごけしごけ」と言うと、今度はとにかくしごけばいいのかとしごき過ぎてしまう方も出てきてしまうのですが、しごき過ぎれば、やはり水引はヨレヨレになってきてしまいます。
でも最初は、しごき過ぎてもOKです!
このくらいでは綺麗にラインが出ない、ここまでやっちゃうとしごき過ぎだ・・という両極を体験しておくというのはとても大事です。両極を知ってちょうどいい具合というのがわかるのです。
そして、水引は極力手数を減らした方が緊張感が出るので、最終的には過不足なくしごけるようになる、というのが理想です。
水引に命を吹き込む動作、作る人の手の軌跡
『扱く』とは字の通り、その人がどう水引を扱ったかということです。一見わからないようですが、作品には扱った人の手の跡がしっかりと残り、どういう風に作られたのか、というのがだいたいわかってしまいます。
水引は、書道ととてもよく似ています。
書道も、書く時の姿勢、練習量、筆の状態や、勢いなどが全て集約されて字に現れます。うちの小学男子などが書いたお習字を見れば、どんな風にそれが書かれたのかっていうのがもう目に浮かぶわけです笑
そして、二度書きなど、一度書いた後からなんとかしようといじくれば弄るほど、字のラインは死んでいきますし、作品に力は無くなります。
やはり、一発で流れるように書き上げられた書は美しいですし、その一瞬に全てを筆先に注げるのは、それなりの練習を積んでいるからです。これと水引も似ていて、『筆で字に命を吹き込む』のと同じように『手で水引に命を吹き込む』のです。
美しい書、というのがどうやって生み出されるのかを思い浮かべていただくと、水引に置き換えた時どうすべきかが見えてきます。
水引は真っさらな半紙だと思っていただき、ケチらず、襟を正す気持ちで向き合ってみるといいかもしれません。
終わりに
師匠の水引の扱い方、手の運び、指の力加減、を毎日じーっと見て感じて習得してきた私にとって、こういったメディアを通してそれを伝えるというのは、当初信じられないものでした。水引の扱い方を熟知している方ほど、もしかしたらそう思われているのではないでしょうか。
それゆえに、そもそも伝わらない、と伝えることを諦めてしまっているようにすら感じています。最近では、しごかなくても扱いやすい”紐”のような水引が出てきていることからもそう思わずにいられません。
こういった新種の水引のおかげでより用途が広がるので全く否定すべきことではなく、私も用途によっては使ってみたいですが、本来の水引の儚さの上に形作られる緊張感のあるメリハリこそが水引らしさだと捉えているので、そのラインを生み出すしごき方=扱い方というのも、ちゃんと後世まで伝えていきたいという想いで書いております。
リアルで本物の技を見られる場所というのは本当に限られてしまっているので、水引がどうやって扱われてきたのか、少しでもその感じをお伝えすることができていたら幸いです。
だいたい同じ内容ですが、動画では手元を見ながらより理解を深められますので『アーティスティック水引講座1〜4』もぜひ参考にご覧ください。
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あなたの水引創作に役立ちましたら幸いです。最後までお読みくださりありがとうございます。